愛宕山〜寄日峠
前回の「二渡山〜持丸山」に続いて、桐生川流域の空白地帯の山歩き。代表幹事代行さんに同行頂き、今回は鷹林寺から登り始めて、忍山(おしやま)山稜南部の愛宕山〜寄日(よっぴ)峠の間を歩いて来ました。
鷹林寺の駐車場に車を置いて出発。「やまの町桐生」の天竹山/愛宕山の記事によると、愛宕山への取り付きは『駐車場の脇を流れる沢のフェンスにつけられた扉を開き、水路に降ります。山側の三段の石積みを登ると水源涵養保安林の標柱の先に踏み跡があります。』とある。フェンスの扉はすぐに判ったが、水路の対岸の石積みの上には猪除けの金網の柵が張り巡らされている。ホントにここから登るの?他に通れるところはなさそうなので、ペラペラで錆びた柵を登って強引に越える。
水源かん養保安林の標柱の先でもう一回猪除けの柵を越え、行く手の尾根を目指して杉林の斜面を直登する。しかし、どんどん傾斜が増して、滑落の危険さえ感じるような斜度になる。これはヤバい。回りを良く見渡すと、な〜んだ、斜めに登って行く山道があるじゃありませんか。
この山道を辿ると、急斜面をうまくジグザグに登って、疎らな雑木林に覆われた尾根の上にあっさり出た。橇道の跡を辿って緩く登ると、小広い平地に大小2基の石祠のある愛宕山頂上に着く。大きい方が愛宕神社で、台座に「梅田村大字二渡村氏子中」、「明治三拾八年拾壱月拾日遷宮」と刻まれている。小さい方は屋根正面の破風に「疱瘡神」とある。私にとっては初めて見る珍しい神様だが、後日調べると、江戸から明治時代にかけて広く信仰されていた神様らしい。
愛宕山からさらに北へ尾根を辿ると、こちらには参道らしいはっきりとした道型が付いている。石祠を過ぎ、道型から離れ、伐採された枝が小うるさい稜線を僅かに辿ると天竹山のピークに着く。木の間から鳴神山がわずかに見えるだけの何とも冴えないピークで、完全に名前負け(^^;)。ここから稜線を少し下ると、点名・猿石(せりし)の三角点(標高392m)の標石がある。ここはピークですらなく、緩い下りの途中だ。ピークハント?して天竹山に戻り、北の寄日峠に向かって縦走を開始する。
尾根を境に左は概ね杉林、右は雑木林が広がっている。藪がない緩い尾根なので歩き易い。ところどころから、仙人ヶ岳から高戸山かけての山並みが見える。
尾根を淡々と歩いて、571m標高点の南の鞍部に着く。地形図にはこの鞍部を越える破線が記載されているが、実際には峠道らしいものはない。西側に明るい雑木林の急斜面が落ちているだけである。
ここから少し急な坂となり、地図上の距離の割には時間がかかって、雑木林に囲まれた571m標高点に登り着く。立ち木の幹には「蕪丁」と書かれたテープが巻かれていて、この辺りを何度も歩いているhisiyamaさんが残したものらしい。
571m標高点から北へ稜線を下る。杉林に密に覆われた暗い尾根で、谷から冷たい風が吹き上がって寒い。地形図の上では、571m標高点の北の鞍部にも峠道が記載されているが、実際には暗い杉林が広がっているばかりである。ここから急斜面を登って、607m三角点に着く。
頂上の西面は背の低い若い植林地で、稜線を僅かに進めば日溜まりもあって暖かいので、枯れ草の上に腰を下ろして、ここらで昼食とする。お腹が減ったー。ラーメンやパン、代行さんに持って来て頂いた果物等を美味しく頂く。鳴神山の眺めも良いし、今回のコース中ではお勧めできる休憩スポットだ。
満腹してまったりしていたが、そろそろ先に進もう。正面の鳴神山から左側の桐生市街にかけての展望を楽しみながら稜線を下る。再び杉林に覆われた尾根になり、破線が越える三つ目の鞍部を通過する。この鞍部には左側の杉林の斜面に山道が付いているが、峠にありそうな石仏や祠の類はない。峠の探索は、今回は不作に終わったようだ。
ここから今日のコースの最後のピークへの急登となる。この無名峰の頂上も杉林に覆われて、展望はほとんどない。わずかに忍山川流域の湯本の集落の屋根が、眼下に光って見えるくらいだ。
無名峰から寄日峠へは急降下となり、疎らな木立を手掛かりにして慎重に下る。一段下った所から、木の間を透かして北方の白萩山〜残馬山周辺の山々を眺める。白萩山の南にはまだ歩いていない稜線が続いていて、気になるところだ。
下り着いた寄日峠には、「残馬山」と書かれた古い道標が落ちていて、背後のツバキ林の中には2基の石祠が鎮座ましましている。やはりこういうものがないと、峠という感じがしない。祠の側面には「平 寄日 中尾」、「嘉永四亥年三月吉日」の文字が見える。
ここから東側に下れば、梅田ふるさとセンター発のバスにちょうど間に合いそうだが、時間も十分にあるので、西側の大茂(だいもん)に下ることにする。下り始めはしっかりとした踏み跡があるが、すぐに沢に突き当たって道は消滅する。沢筋に沿って下り、杉林に入れば再び踏み跡が現われて、程なく忍山林道に飛び出た。
忍山林道を少し下ると、廃旅館のある大茂で、急ぎ足で通過。前回はこのすぐ先から車で帰ったため、見逃したポイントがある。数軒の民家がある湯本の集落を過ぎると、道端に朽ちかけた鳥居がある。ここがお目当てのポイントの温泉神社だ。鳥居を潜り、薄暗い樹林の中の苔むした石段を登ると、傾きかけた山門の奥に社殿がある。怪しい雰囲気が横溢。社殿の中は真っ暗で見難いが、「薬師瑠璃光如来」、「湯泉大權現」と書かれた幟が奉納されている。
山門の中には、かつての温泉の源泉井戸があり、淀んだ泥水が溜まっている。底は見えない。長さ2mくらいの木の枝を差し込んだら、ずぶずぶと沈んで行った。ホラー映画「リング」に登場する、貞子が沈められた井戸みたいだ。などと代行さんに話したら、代行さんが動揺して階段で転び、デジカメが壊れてしまった。社殿の右手には青面金剛像がある。この像の足元には、二羽の鶏に頭を突かれている見ざる一匹が彫られている。
怖〜い温泉神社の探索を終えて忍山林道を下って行くと、忍山川はなかなかの渓谷となって、石祠を祀った丸い巨岩(弁天島)が川の中に立つ。すぐ上流には滝(弁天滝)や朽ちて落ちた木橋があり、ここが蕪丁の入口らしい。興味しんしん。弁天島には桟橋と梯子が掛かっていて、石祠にお参りできる。ここも車では通過してしまいがちなポイントだ。
弁天島からさらに林道を歩く。荷場(にんば)の集落では、ロウバイが良い香りを放っていた。碁場小路の集落を過ぎれば、出発点の鷹林寺まではあとわずかの道のりだ。
おまけ。鷹林寺からの帰途、上ノ原の県道沿いにある青面金剛を訪ねた。左手に髪の毛を摑んでショケラをぶら下げた、なかなか恐ろしげな象だ。屋根が掛けられていて大事にされ、現在も地元の信仰を集めている様子だった。