笊ヶ岳

〜20日(月)
メンバー:M, T
ルート地図 GPSのログ(赤:1日目、青:2日目復路)を地理院地図に重ねて表示します。

海の日の3連休は、桐生山野研究会のMさんと1泊2日(+予備日1日)で上信越国境の山に出かける予定だった。しかし、初日の18日は天気が悪く、出発を見合わせて様子見。予報では19日の天気もあまり良くなく、20日にようやく晴れ間が出そうだ。当初の計画は実行が難しくなったので、20日の晴れに期待を託して、私が以前から登りたいと思っていた笊ヶ岳へ行く先を変更。Mさんもこの計画に乗る。19日に老平から奥沢谷の広河原まで入り、テント泊。20日に笊ヶ岳を往復してテントを撤収し、老平に戻るという計画で出かけて来ました。

7月19日
天気:時々
行程:雨畑湖 10:15 …老平 10:40 …林道終点 11:10 …広河原 12:20

Mさんを車に乗せて桐生を4時頃に出発し、雁坂トンネル経由で早川に向かう。ETCで高速料金1000円の影響で三連休中の各地の高速道は激しく渋滞しているようだが、午前中のまだ早い時間帯の下道は込み合うこともなく、順調に走る。雲が低く垂れ込めて、早川沿いの道から笊ヶ岳を望むことができなかったのは残念だが、予定通りの時間に老平の登山口に到着する。

しかしなんと、登山口の駐車場は満杯。笊ヶ岳は200名山ということに加えて3連休なので、このルートの人気は予想以上に高いようだ。山間の集落は道が狭く、駐車できる場所は他にない。結局、雨畑湖畔まで引き返し、ようやく駐車スペースを見つけて車を置く。

車から降りて出発の準備をしていると、雨がザーッと降り出す。午前中は保つと思っていたのだが…。雨具上下を来て歩き始めたが、さらに強い降りになったので、ヴィラ雨畑の軒先で雨宿りしてMさんと鳩首協議。撤退という話も出たが、雨が小振りになったのをしおに、行ける所まで行くことに決定。前進する。


老平登山口の駐車場


老平登山口のゲート

老平登山口の駐車場のすぐ先にゲートがあり、そこを過ぎるとすぐに未舗装の林道になる。奥沢谷は深く、周囲の山肌はとても急峻だ。幸い雨は徐々に弱まり、行く手には布引山あたりの稜線に雲が巻いて高々と見える。


奥沢谷沿いの林道のトンネル


檜横手山(中央左のピーク)と
布引山の一部を仰ぐ

蒸し暑くてたまらないので、雨具の上を脱ぎ、林道終点から苅り払いされた山道に入る頃にはすっかり雨も止んだので、雨具の下も脱ぐ。茶畑を過ぎると無住の民家がある。庭先の雑草は疎らで、縁側に座れば寛げそうだ。山腹をトラバースし、ところどころに金属製の桟道を交えた山道を歩く。支流のタケ沢を吊り橋を渡り、さらに山奥に入って行く。


奥沢集落跡の無住民家


タケ沢の吊り橋

頭上から水が落ちている個所があり、飛沫を浴びて通過する。足元はぬかるみで滑り易く、下は高い崖なので通行注意。「この先、最終水場」という標識を過ぎると、老朽化して傾いた桟道があり、ここの通過が一番緊張した。遥か下に奥沢谷の流れを見ながら、岩壁を穿って作られたへつり道を進む。


水飛沫を浴びて崖を通過


岩壁に穿たれたへつり道

次第に川が近づくと、広河原の徒渉地点に着いた。ここが最終水場となる。水量が少ない時は飛び石伝いに渡れるそうだが、今日は水量が多めなので、裸足になって渡る。対岸の一段高くなった林間に平地があり、既にテントが二つ張られている。中の人は笊ヶ岳をアタックしているようだ。川が増水すると閉じ込められる心配はあるが、快適なテン場だ。


広河原の徒渉地点


広河原にテントを張る

テントを張って、早速、河原で宴会。缶ビールで乾杯し、つまみを食べ、時間がたっぷりあるので、ウイスキーにも口を付ける。何人か山から降りて来て、話を伺うと山上はひどい風雨だったそうだ。ここに何度も来ているという単独行の男性の話も聞いた。曰く、ここの登りは黒戸尾根や早月尾根より厳しいとのこと。

そのうち、他の二つのテントの主(単独行の男性、ご夫婦)も戻って来て、今晩はここにもう一泊するようだ。Mさんの技でコッヘルでご飯を炊き、レトルトカレーをかけて、美味しく頂く。日暮れとともに就寝。非常に蒸し暑い夜で、寝苦しい。夜中に一回、雷が鳴り、このとき寒冷前線が通過したようだ。

7月20日
天気:のち
行程:広河原 4:15 …山ノ神 5:00 …檜横手山(2021m) 7:30 …布引山(2584m) 9:20 …笊ヶ岳(2629m) 10:30〜11:10 …布引山 12:15 …檜横手山 13:45 …広河原 15:50〜16:10 …老平 17:40 …雨畑湖 18:00

夜半から涼しくなって、ぐっすり良く眠れた。3時に起床し、棒ラーメンを食べて4時過ぎに出発。まだ夜明け前で、最初はヘッドランプを付けて歩く。非常に急な山腹をジグザグに登り、小尾根に登り着くと石祠のある山ノ神だ。朝日が差し込んで来て、天気は上々のようだ。


急斜面をジグザグに登る


山ノ神

ここから急な尾根の登りが延々と続く。樹林の中で展望には乏しいが、ガレの上に出た所から富士山を望むことができた。富士山の上には吊し雲がかかっていて、この好天も長続きしないかも知れない。周囲の山肌は非常に急峻で、谷は深く切れ落ちている。


樹林に覆われた尾根を登る


吊し雲がかかる富士山を遠望

やがて、ワイヤーやドラム缶、ウィンチ等が散乱する場所を通る。かつての造林作業の遺物で、こんな険しい山奥で行われていたとは驚きである。カラマツ林の尾根を登ると「昭和43年度人工造林地」という看板があったから、造林されていたのは40年も昔である。


造林作業の跡


カラマツの植林帯

カラマツの植林帯を過ぎるとシラビソの自然林となり、苔むした倒木が奥秩父のような雰囲気を醸し出している。尾根が少し広くなると、檜横手山に到着する。頂上はシラビソに覆われた意外と広い平坦地で、テントが2張りほどあった。良いテン場だが、ここまでテントと水を持って上がるのはかなりの労力だろう。日帰り装備でも結構疲れた。


シラビソの自然林


檜横手山頂上

しかし、まだまだ標高差500m以上の登りが残っている。檜横手山から少し下り、布引山への登りに取り付く。ここは樹林が非常に美しい。林床にはカニコウモリ(まだ蕾)が群生し、ゴゼンタチバナの花も多い。尾根というより、山腹の急坂を登って行く。


深い森林を登る


ゴゼンタチバナ

ようやく稜線に登り着き、右に折れる。少し登ると樹林が切れて頭上に青空が広がり、高山的な稜線となる。布引崩れの縁に出ると、待望の南アの展望が開けた。


高山的な稜線に出る


布引崩れの縁を登る

まず目を引くのは、聖岳と上河内岳だ。南方には布引山から稜線続きで、がっしりとした台形の山容の稲又山と青薙山も間近に見える。しかし、そちらへの縦走は、所ノ沢越へがっくり落ちてから、大きく登り返しているので、かなり大変そう。


布引崩れから青薙山と稲又山


布引崩れから上河内岳と聖岳(右)

大展望を楽しみながらガレの縁を登ると再び樹林の中の道となり、所ノ沢越からの道を合わせる。そちらの道はか細くて、なかなかしょっぱそうだ。

すぐ先が布引山の頂上で、樹林に囲まれて展望はない。「東海パルプ社有林」と書かれた太い木製の山名標識が建っている。ここまでの厳しい登りをこなして、ホッと一息。笊ヶ岳の方へ少し進むと、2張り分程のテントサイトがある。水場はないが樹林に囲まれて、稜線上でも安心できる場所だ。


布引山頂上


布引山頂上のテントサイト

笊ヶ岳へは針葉樹林帯の尾根をゆるゆると下る。途中で奥沢谷を見おす場所があり、スタート地点の雨畑湖が遥か下に見える。写真では感じがうまく伝わらないが、よくもまああそこから登って来たものだと思う。しかも、今日はあそこまで下らなければならない。


雨畑湖を俯瞰し、富士山を遠望


笊ヶ岳への稜線

樹林が切れて、笊ヶ岳の双子峰が見えた。ようやく近づいて来たが、下りきった鞍部からは標高差約200mを登らなければならない。Mさん曰く、(桐生の)茶臼山を登るのと同じ。なんと的確な表現(^^;)

鞍部で標高2410mの標識を見て、笊ヶ岳への最後の登りに取り付く。樹林の中を登り、ハイマツ帯を通って急坂を登ると、笊ヶ岳の頂上に到着した\^o^/


笊ヶ岳・大笊(左)と小笊


笊ヶ岳頂上

頂上はまさに360度の大展望。まず、東には、小笊の向こうに富士山が見える。これは笊ヶ岳のシンボル的な景観なので、この目で見ることができて良かった。南を見れば、布引山や稲又山、南ア南部の奥深い山々が見渡す限りに広がっている。


小笊の向こうに富士山を遠望


笊ヶ岳より布引山(左)

そして南ア主脈の山はほとんどすべてが見える。特に、聖岳、赤石岳、荒川三山は大井川を隔てた向こう正面の位置にあり、大迫力だ。さらに北には、塩見岳、ちょっと頭を出した仙丈ヶ岳、白峰三山は縦に重なっているが、北岳が意外に尖って見える。鳳凰三山も望むことができ、主要な山で見えないのは甲斐駒くらいだ。Mさんも、かつて何度も登った南アを見るのは久し振りだそうで、たくさん写真を撮っている。


笊ヶ岳より赤石岳(左)と悪沢岳


笊ヶ岳より塩見岳(左)と白峰三山

お湯を沸かしてスープを飲み、パンの昼食をとる。大展望に名残は尽きないが、帰路も長い。単独行の男性が頂上に着いたのと入れ替わりで、頂上を辞す。


ハクサンシャクナゲ
(笊ヶ岳頂上付近にて)


ウスユキソウの仲間?
(布引崩れ付近にて)

鞍部まで下って、今度は布引山へ約170m登らねばならない。やれやれ。布引山頂上で小休止したあとは、延々と下るのみである。最初は長くつらく感じたが、途中でいろいろ考えることを停止して無の境地に入ると、いつのまにやら山ノ神に着いていた(^^;)。急斜面のジグザグ道を滑らないように注意して下り、ようやく広河原に到着。テントを10分で撤収して、川を渡る。


長い下りを経てテントに帰着


広河原を徒渉して帰途につく

時刻は16時を過ぎ、曇って来たせいもあって、奥沢谷沿いのへつり道は既に薄暗い。林道に出れば安全地帯だ。坦々と林道を歩いて、老平に着く。いっぱいだった登山口の駐車場はもう空いていて、布引山から笊ヶ岳の途中ですれ違ったパーティが車に荷物を積み込んでいるところだった。お疲れ様でしたー。

最後はとぼとぼ歩いて、雨畑湖畔の車に到着。やったー。ヴィラ雨畑のお風呂で2日間の汗を流してさっぱりしたあと、帰途に付く。途中、R20甲府バイパス沿いにある「かつや山梨甲府店」でロースカツ定食を食べ、桐生に帰着したのは日付が変わる直前だった。