山伏山・天水山〜深坂峠

〜22日(月)
メンバー:S,S,T

週末と休日出勤の代休を合わせた3連休を利用して新潟県の松之山に2泊し、信越トレイルの東端と付近の山々に登ってきました。

信越トレイルとは、新潟と長野の県境を成す関田(せきだ)山脈の尾根上に拓かれ、2008年秋に全線が開通した全長80kmにおよぶ長距離トレッキングコースです。関田山脈は標高1000m内外の稜線が緩やかに連なる低山ですが、豪雪地帯にあってブナ林に覆われ、新潟県側は雪食と地滑りによる急崖となり、山麓には棚田が点在する山村の景観が広がるなど、特色のある山地です(詳しくは信越トレイルクラブHPを参照)。梅雨の晴れ間にも恵まれて、自然豊かな山歩きが楽しめました。

6月20日
天気:
行程:登山口 13:05 …山伏山(903m) 13:30〜13:50 …風穴 14:00〜14:05 …登山口 14:25
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

桐生を車で発ち、越後湯沢駅11:17着の新幹線で来たS&Sを駅前でピックアップ。今日は午後から登り始めるので、軽い山歩きを計画。津南町の北西にある山伏山に向かう。石打からR353を経由して津南町に入り、R117を西に走って信濃川を宮野原橋で渡ったところで右折。山伏山の山麓の無印良品津南キャンプ場/ANNEX山伏山森林公園へ向かう細い林道をぐねぐねと登る。

キャンプ場に着くと薬師湖の奥に山伏山が小さくツンと尖って聳えている。休日とあってキャンプに来た人は皆無ではないが、まだシーズン前といった感じの静けさ。山伏山の前の広い駐車場に車を置き、草地に腰を下ろしてまずは腹ごしらえ。正午をまわって陽射しが強く、暑い。

山伏山の登山口は、駐車場のすぐ先にある。道標が設置され、右に湖畔巡りのコースが分岐する。帰りはそちらを通って戻って来る予定。山伏山への登山道は幅広く、苅り払いされていて、良く整備されている。


駐車地点より仰ぐ山伏山


山伏山登山口
右は湖畔通り

樹林の中を登ると配水場?があり、山伏山の頂上が仰がれる。急峻で登りがちょっと大変そうに見えるが、登山道は大きくジグザグを切って付けられており、急坂はない。まさに、キャンプの際の軽いハイキングにぴったし。


配水場?より山伏山を仰ぐ


山伏山表参道
ブナ林を登る

漸く咲き始めのガクアジサイや、にょきにょき生えているギンリョウソウを眺めながらブナ林を登る。樹林の中で展望は乏しいが、木の間から信越トレイル東端の天水山あたりの稜線が見える。あちらも深い緑に覆われている。


緩いジグザグの登りが続く


天水山方面の展望

暑くて結構汗をかきつつ、30分弱の登りで頂上に到着する。頂上には「明治二十八年十月二日願人涌井太源二」と刻まれた石祠、石仏、木登り用?に枝からロープが下がり、幹に鉄梯子が立て掛けられたブナの大木がある。樹林に囲まれて展望はないが、展望台という道標に導かれて少し下ると断崖の上に出て、眼下に薬師湖の眺めが良い。


石祠のある山伏山頂上


展望台から薬師湖を俯瞰する

展望台から頂上に戻り、水を飲んで休憩する。頂上の道標によると、登って来た道は表参道、反対側に下る道は裏参道と言うらしい。帰りは裏参道を下る。こちらの道も良く整備されている。すらりと伸びたブナの美林を下って、北側の山麓に降り着いた。

麓には風穴という標識があり、見てみると石垣に囲まれた四角い窪地があり、その底に雪が残っている。石段を降りて中に入ると、冷気が溜まっていてとても涼し〜い。涼しくて気持ち良く、蒸し暑い外に出るのが嫌になるくらいだ。石垣の隙間から冷風が吹き出ているため、雪が残っているらしい。この風穴はなかなかの推奨ポイント。


裏参道のブナ林を下る


雪の残る風穴

山伏山の山麓をぐるっと半周し、車を置いた駐車場に戻った。全行程1時間半の短い山歩きだが、見所が詰まっていてなかなか楽しめた。


湖畔通りを戻る


薬師湖畔の山伏山荘から
仰いだ山伏山

後は今日の宿に向かう。山伏山の北をまわって林道を東に走り、樽田でR405に出る。途中、樽田の森(津南町森林セラピー基地)という場所があり、樽田の池という名の溜め池の周辺に遊歩道が整備されている。雁ヶ峰峠を経て松之山に向かう旧道コースもあり、興味を引かれたが、入口は藪っぽかった。

R405はこのあたりによくある、国道とは思えないほど狭くて曲がりくねった国道だ。少し下った場所には、これもこのあたりの見所の棚田の一つがあり、藁葺き屋根の小屋がいい被写体になっていて、ドライブ途中の観光客がカメラを構えていた。


R405沿いにある
留守原(るすばら)の棚田


越後松之山温泉・凌雲閣

R405を下って松之山温泉の天水越(あまみずこし)地区に出て、今晩の宿の凌雲閣に着いた。凌雲閣は、松之山の温泉街とは山一つ隔てた静かな山村にある。昭和初期に約80℃の高温泉源をボーリングで掘り当てたそうで、当時の木造三階建が残るレトロな宿だ。早速、大浴場へ。泉質は、黄みがかった透明、昔の木の電柱に塗られていた黒い防腐剤のような独特の臭いがして、なめると苦くて塩っぱい。松之山温泉は日本三大薬湯(あとは草津と有馬)だそうだが、なかなかユニークな温泉だ。夕食も山菜中心でとても美味しかった。

6月21日
天気:のち
行程:松之山口 10:15 …天水山(1088m) 11:00〜11:15 …三方岳(1139m) 12:15〜12:35 …深坂峠 13:00 …水場 13:30 松之山口 14:00
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

夜半から朝にかけて激しく雨が降ったが、朝食を終える頃には止んだので、今日は予定通り、信越トレイル東端の天水山(あまみずやま)〜深坂(みさか)峠の区間を歩くことにする。

今晩の宿は別になるので凌雲閣をチェックアウトし、コンビニで昼食のパンを買ったのち、天水山登山口の松之山口に向かう。天水山北面の緩い尾根と谷にはブナ林が広がっていて、見事な森林を形成している。松之山口に車を置き、登山道に入る。最初は一組のご夫婦と前後して登る。ピルルルル〜あるいはキョロロロロ〜と聞こえる鳥がアカショウビンと教えて頂いた。残念ながら姿は見えない。


松之山口から天水山に向かう


林道終点から山道に入る

最初は林道を歩き、林道終点からはブナ林の中の踏み跡を登る。根曲がりのブナが積雪の多さを物語る。実をつけた草はなんでしょう?(ご教示頂きました。セリバオウレンのようです。)


これは何の実?


根曲がりのブナ林


ブナ林を登る


津南口からの道を合わせる

津南口からの道を合わせ、稜線に出ると、後は尾根上を天水山まで登る。南側(左手)に見える高い山は鳥甲山?ぬかるんで少々滑る急坂を登り切ると、広く緩やかな尾根となる。ブナの幹の高い所に付けられた天水山の金属プレート(たぶん積雪期に付けたのだろう)を見ると、天水山頂上に着いた。


尾根を登る


ブナの幹に付けられた山名標

頂上はブナに囲まれているが、南側のみ木の間から展望があり、信濃川を隔てて、頂上が平らで特徴ある苗場山が意外と近くに見える。とすると、先程見えた山はやはり鳥甲山のようだ。


天水山頂上


天水山から苗場山(右奥)を望む

天水山の先もブナ林の尾根歩きが続く。緩く下ると新潟県側(北側)は急斜面となり、登山道はその縁を通って小さな登り降りを繰り返す。急斜面の下には緑に包まれた谷があり、遠くには棚田が広がっている。途中、北側に広く開けた展望ポイントがあり、遠く黒姫山まで見通すことができる。涼しい風が吹き上がって来て、気持ち良い。


信越トレイルを歩く


新潟側(右)は急斜面


展望ポイントから黒姫山を遠望


小さなアップダウンを繰り返す

やがて少し長い登りとなり、平坦な尾根上のぬかるんだ道を進むと、どこがピークかわからないが三方岳の頂上に着いた。樹林に囲まれ、道標と三角点があるだけで展望は全くないが、正午を過ぎたのでここでお昼にして、パンを食べる。


平らな尾根上は少し泥濘


三方岳頂上

三方岳からの下りは少し急だが、すぐに緩い尾根になり、やがて広場に出る。深坂峠から林道が通じていて、車が一台駐車していた。山道はブナ林の中に続いていて、これをゆるゆる辿ると深坂峠に出た。


少し急な下り


電波塔跡?の広場

深坂峠には大きな石碑があり、新潟県側には見渡す限り緑に覆われた丘陵地帯が広がって、遠くには米山やGWに登った刈羽黒姫山・八石山、越後三山まで見える。これは他にちょっとない景観かも。


深坂峠の石碑


深坂峠から新潟側の展望

深坂峠からは林道野々海天水越線を辿って、車を置いた松之山口まで戻る。急斜面を横切るように付けられた林道は車の通りも稀で、ずっと新潟側を眺めて歩けるので快適だ。途中、道路脇に湧き水があった。飲んでみると雪解け水のように冷たくて美味しい。ペットボトルに詰めて持って行く。


林道野々海天水越線を歩く


途中の冷たい湧き水

この林道は冬期は通行止めになり、今年は6月19日に開通したばかりだ。雪はほとんど消えているが、途中には木の枝や枯れ葉が覆い被さった残雪があった。標高約1000mの山に6月下旬まで雪が残るのだから、冬期の積雪量は相当のものだろう(尾根上では8mに達するらしい)。


黒姫山を遠くに望む


道路脇の残雪

展望をのんびり楽しみつつ、駐車地点に戻った。信越トレイルは、ブナ林などの自然環境や山麓の展望などが良かったので、この先の区間も歩いて見たい。

今日の宿は松之山温泉のひなの宿千歳。こちらは温泉街にあり、狭い通りに沿って宿や飲食店、土産物屋が立ち並んで賑やかだ。温泉は凌雲閣と同じく、独特の油臭さのある塩分の強い泉質だ。


松之山温泉の温泉街入口


ひなの宿千歳

一風呂浴びた後、夕食まで時間があるので、一人で温泉街を探索した。上流にいくと源泉湯やぐらがあり、例の油臭さが漂って、勢い良く湯気が吹き出していた。源泉の説明板によると、火山地帯でもないのに90度以上のお湯が自噴しているそうで、なんでも約1200万年前の化石海水が断層から湧出する「ジオプレッシャー型温泉」だとか。本当かどうかはわからないが、いずれにしても珍しいタイプの温泉には間違いない。

源泉湯やぐらのすぐ上には、奇祭「むこ投げ」で有名な薬師堂があり、むこが投げ落とされる階段を見学した。


源泉湯やぐら


奇祭「むこ投げ」の舞台となる
薬師堂

こちらの宿の食事も、鯉の甘露煮や豚肉と粥の入った鍋など大変美味しい。特にご飯は甘みがあり、おかずなしでもおかわりするほど旨かった。食後は宿のサービスでホタル見学ツアーに参加。マイクロバスに乗って、美人林近くの棚田でホタルを見た。

6月22日
天気:のち
ルート地図 GPSのログ(往路)を地理院地図に重ねて表示します。

最終日、予報では雨が降り出すらしいので、軽い山歩きとする。凌雲閣に泊まったとき、宿の昔のパンフレットが展示されていて、岩見堂岩という場所が松之山温泉周辺の観光スポットとして紹介されているのに興味を引かれた。岩見堂岩は断崖から突き出た岩で、その上におねいさんが寝そべっている白黒写真が掲載されていた。これは気になる。地形図には地名の記載はあるが、現在は全く宣伝されていない模様。

まず、R405の三方峠から北に分岐する農免農道を進み、西側から岩見堂岩にアプローチする。ぎりぎりの幅の林道を進むと、行く手の稜線上にパンフレットの写真と同じ様な突き出た岩場が見えた。小さな溜め池の堰堤を渡ると車1台分の駐車スペースがあり、古ぼけた「岩見堂登山口案内図」があった。図中では、現在地はA地点になるらしい。

車を置いて山道に入ってみるが、人が歩いた形跡は全く無しで草むらに覆われている。少し進んだところで藪がひどくなり、断念して引き返す。後日、GPS軌跡を確認すると、途中で右に折れてB地点に向かうべき個所を直進してしまったようだ。


A地点にある案内図


藪に覆われた岩見堂岩登山道

西側から登るのは難しそうなので、次は東側からトライ。松之山湯本から湯峠に上がり、大松山(おおまつやま)への未舗装林道に入る。途中で大松山大池の方へ左折すべきところを直進してしまい、大松山の頂上直下まで車で上がってしまう。ついでなので、大松山にも立ち寄ってみますか。広い駐車スペースに車を置いて、ペットボトルとデジカメだけを持って歩く。


大松山直下の駐車場


大松山頂上へは僅かの距離

といっても頂上までは2分とかからない。頂上は広く開けて、一段高い所に石祠と「中村先生頌徳(しょうとく)碑」という石碑が建つ。


小広い大松山頂上


ウツボグサ

今日は天気が悪いので遠方はもやがかかっているが、眼下には松之山兎口の山村風景、遠くには越後三山のシルエットが見えて、展望はなかなか良い。


大松山から山麓の兎口の集落と
越後三山遠望


大松山から関田山脈主稜線
左奥に鳥甲山

車に戻り、先程間違えた分岐を左に進んで岩見堂岩に再度アプローチする。狭い未舗装林道に何とか車を進めて、案内図のG地点と思われる広い駐車場に着く。ここには標識の残骸?があり、歩いて10分とだけ読める。ついに雨が降り始めたので、傘を差して岩見堂岩を目指してみた。しかし、山道に入るとまたしても藪っぽいので断念。うーむ、非常に気になるが、またの機会ということで。

これで今回の温泉旅行と山歩きは終了。信越トレイルは気に入ったので、また歩きたい。松代を経由して、途中のそば屋で昼食を食べ、越後湯沢駅でS&Sと別れて桐生に帰った。